実務対策

贈与税の配偶者控除は、比較的多く利用されている制度ではあるが、自宅以外に不動産を所有していない者が配偶者に贈与する場合の相続税の節税効果はあまり大きくない。というのも、自宅の敷地は、配偶者が相続するときには小規模宅地の課税価格の特例(特定居住用不動産)に該当し330㎡までは課税額が80%減額されるから自宅敷地の評価額が2,000万円に相当する持分を満額贈与しても相続税の課税価格に換算すると400万円しか減額されず、節税効果は少ない。自宅家屋を贈与するとしても、家屋は時の経過により老朽化し評価が下がるので家屋を贈与することは節税という観点から見ると有効ではない。

ただし、相続開始前3年以内の贈与であっても、贈与税の配偶者控除の額(最高2,000万円)までは、3年内加算をする必要がないので、その意味では課税価格に換算して400万円、実効税率20%で税額80万円と僅少ではあるが相続税の節税効果は認められる。

長年居住した自宅を売却する場合、土地も家屋も夫婦で共有ならば、二人とも居住用資産の譲渡の特別控除(最高3,000万円)を受けることができるので、高額な不動産ならば贈与税の配偶者控除を使い妻と共有にした後、譲渡すると各々居住用資産の譲渡の特別控除を適用できる(措法35)。ただし、居住用資産の特別控除を各々別々に受けるためには家屋もごく一部でよいので妻名義にする必要があり、かつ、贈与税の配偶者控除を受けるためには、贈与を行った翌年3月15日まで所有し居住しておく必要があることに留意しなければならない(土地を家屋とともに取得しないと不動産取得税の軽減がない。)。

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