POINT
特定公益信託で財務大臣が指定する学術に関する顕著な貢献を表彰するもの若しくは顕著な価値がある学術に関する研究を奨励するものから交付を受ける金品又は学生若しくは生徒に対する学資の支給を行うことを目的とするものから交付を受ける金品は、委託者が個人である場合には贈与とみなされるが、委託者が法人である場合の所得税と同様に贈与税を課税しない規定を設けている。
財務大臣が指定した特定公益信託から奨学金などを支給されたときに受給者に贈与税が課税されないための規定である。
相続税法では公益信託の委託者は特定委託者とみなされるので、公益信託から金品を受領すると、委託者が個人の場合には、委託者から贈与があったものとして取り扱われるのが原則である(相法付則24項)。公益性の高い学術奨励金や奨学金などを贈与税の課税対象とすることは好ましくないので、特定公益信託から支給される学術貢献賞賞金や学術研究奨励金のうち財務大臣が指定するものや、学生、生徒に対する学資の支給を目的とする特定公益信託からの奨学金は贈与税の非課税財産としているのである(なお、一時所得の非課税規定と異なり芸術貢献賞賞金は非課税とされていない。)。
なお、委託者が法人の場合は同様の理由で、委託者である法人から個人に対する贈与となり、公益信託から奨学金などを支給される者に対し一時所得の課税対象とするのが原則である(所法34、所基通34-1(五))。特定公益信託の委託者が法人の場合は、学術貢献表彰及び芸術貢献表彰又は学術研究奨励を目的とする特定公益信託から交付される金品で財務大臣の指定するもの及び奨学金は所得税が非課税とされている(所法9①十三)。
公益信託とは、民間の資金を広く一般のために役立てるための制度であり、信託法258条に規定する受益所の定めのない信託のうち、学術、技芸、慈善、祭祀その他公益を目的とするものであって、受託者において主務官庁の許可を受けたものである(公益信託ニ関スル法律1、2①)。主務官庁が信託銀行等に引受けを許可する信託は平成6年9月13日に公益法人等監督事務連絡会議決定が定めた「公益信託の引受け許可審査基準等について(巻末:参考通達等2 参照)」に基づき審査され(同基準には残余財産の帰属についての付則は明記されていないが)、現実に引受けを許可される公益信託は、残余財産が委託者等の手元に戻る可能性があるものはない。公益信託として主務官庁から許可されるものは、すべて税法が定める特定公益信託の要件を具備している。
現実に公益信託は、医療や福祉分野、自然科学や人文科学の研究分野、自然環境保全活動など幅広い分野で活用されている。公益信託には、是姿勢条の区分として「特定公益信託」と「認定特定公益信託」が規定されている。特定公益信託のうち、科学研究助成、学校教育支援、福祉など11の特定分野での信託目的を有するものであること、及びその目的に関し相当と認められる業績が持続できることについて主務大臣の認定を受け、かつ、その認定を受けた日の翌日から五年を経過していないものを「認定特定公益信託」といい、税制上の優遇措置がとられている。
本規定は、特定公益信託のうち財務大臣の指定するものから交付される特定の金品に係る贈与税の非課税規定である。
公益信託のうち、次の①②の要件のすべてを満たす公益信託が税制上の特典のある特定公益信託である(所令217の①、法令77の2①、措令40の4①)。
① 受託者が信託銀行であること
② 次に掲げる事項が信託行為により明らかであること
イ 信託終了の場合において、信託財産が国若しくは地方公共団体に帰属し、又は類似の目的のための公益信託として継続するものであること
ロ 合意による終了ができないものであること
ハ 信託財産として受け入れる資産は、金銭に限られるものであること
ニ 信託財産の運用は、次に掲げる方法に限られるものであること
ホ 信託管理人が指定されるものであること
ヘ 受託者が信託財産の処分を行う場合には、学識経験者で構成される運営委員会の意見を聞かなければならないものであること
ト 信託管理人及び運営委員会に対してその信託財産から支払われる報酬の額は、その任務の遂行のために通常必要な費用の額を超えないものであること
チ 受託者が信託財産から受ける報酬の額は、通常必要な額を超えないものであること
以上の要件を満たすことについて、主務大臣の証明を受けもの。
特定公益信託のうち、特に公益性の高い次に掲げる一又は二以上の信託目的を持ち、信託目的に関し相当と認められる業績が持続できることにつき主務大臣の認定を受けたものをいう(その認定を受けた日の翌日から五年を経過していないものに限る。)(所令217の2、法令77の2③)。