専ら公益の増進に寄与するところが著しい事業を行う者
個人の場合
専ら公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業を行う者とは、その者が個人である場合には公益の増進に寄与するところが著しいと認められる公益事業のみを専念して行う者をいうものとして取り扱う(昭55直資2-182改正)(相令2(相令4の5において準用))。
なお、公益事業を行う者が次の者に対しその事業に係る施設の利用、余裕金の運用その他その事業に関し特別の利益を与えるような場合は、公益事業を行っているといっても、その事業を私的に利用している面も認められるため非課税財産として扱わない旨定められている(相令4の5、相令2ただし書き)。
- その者若しくはその親族その他その者と特別の関係がある者
- その者に当該財産の贈与をした者、その者又はその財産の贈与をした者
- これらの者の親族
- これらの者と特別の関係がある者
これらの者と特別の関係がある者とは、①内縁関係にある者及びその者の親族で生計を一にしている者、②使用人及び使用人以外の者で当該個人から生計をみてもらっている者並びにそれらの親族で生計を一にしている者をいう(相令31)。
特別の利益を与えることとは、次のような場合をいう。
- これらの者が役務を提供し、又はこれらの者の財産を公益事業に提供している等の有無に関係なく、高度の公益事業に係る金銭その他の財産の支給を受けていること。
- これらの者が高度の公益事業にかかる余裕金を生活資金に利用し、又はその施設を居住の用に供している等これらの財産を無償又は有償で利用していること。
- これらの者が利息の有無に関係なく、高度の公益事業に係る金銭の貸付を受けていること。
- これらの者が対価の有無に関係なく、高度の公益事業に係る資産を譲り受けていること。
公益事業を行う者が社団等である場合
公益事業を行う者で財産の寄贈を受け、贈与税の納税義務者となる者は個人に限られない。社団等が贈与を受けた場合は、相続税法では個人とみなされ贈与税の納税義務を負う(相法66)。これらの社団等が受贈者となるときは(贈与を受けた財産が非課税財産となるためには)公益の増進に寄与するところが著しいと認められる公益事業(高度の公益事業)のみをその目的事業として行う社団等でなければならない(相法21の3①三、昭396直審(資)24「3」)。
受贈者である社団等が次のとおり一族支配されていたり、施設の利用、余裕金の運用など事業運営に関連し、関係者に対し特別の利益をを与えているような場合は、社団等が高度の公益事業を行っているといっても、事業が私的に利用されている面も認められるため非課税財産として扱わない旨定められている(相令4の5,相令2ただし書き)。
(イ)当該社団等の役員その他の機関の構成、その選任方法その他その人格のない社団等の事業の運営の基礎となる重要事項(注1)について、その事業の運営が特定の者又はその親族その他その特定の者と特別の関係がある者の意思に従ってなされていると認められる事実があること(注2)。
(注1)事業の運営の基礎となる重要事項とは、役員その他の機関の構成、その選任方法の他、次に掲げる事項がこれに該当するものとして取り扱われている(昭55直資2-182改正)。
- 当該事業の遂行により与えられる公益を受ける者の選任、与えられる公益の種類及びその程度の決定
- 事業の運営に関する諸規則の制定
- 事業計画及び予算の決定並びに決算の承認
- 事業の廃止又は縮小
- 4により不要となった財産の処分
(注2)特別の関係がある者の意志に従ってなされていると認められる事実があることとは、社団等の運営の基本となる規約等に次の1から4までの事項が定められていないこと又は社団等の事績に5から7までの事実がみとめられることをいうものとして取り扱うとされている(昭55直資2-182改正)。
- 特定の者及びその者と特別の関係がある者が社団等の構成員又は役員その他の機関の地位にある者の総数の3分の1以下であること。
- 社団等の機関の地位にある者の選任は、社団等の代表者の指名又は委嘱によるなど恣意的に選任されることなく、たとえば、社団等の総会若しくは更正に選任されている評議員会の選挙により選出されるなど、その行う事業の種類に応じ、機関の地位にあることが適当と認められる者がその地位に選任されること。
- 事業の種類に応じ相当数の評議員、運営委員又はこれらの者に準ずるもの(以下(注2)において「評議員等」という。)を置くこと。
- (注1)に掲げる重要事項の決定又は変更は、評議員等の意見を聞き、役員の全部又は大部分の賛成を得てされること。
- 公益が主として特定の者及びその者と特別の関係がある者に与えられること。
- 高度の公益事業のために支出される費用の額が社団等の収入からみて過小であるなど社団等の経理がその事業の目的に照らして適正でないこと。
- 社団等の運営がその規約等に違反して行われたこと。
(ロ)次に掲げる者に対して当該社団等の事業に係る施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属その他その事業に関し特別の利益を与えること(注3)。
- 当該社団等の機関の地位にある者
- 当該地位にある者又は当該財産の贈与をした者の親族
- これらの者と特別の関係がある者
これらの者と特別の関係がある者とは、①内縁関係にある者及びその者の親族で生計を一にしている者、②使用人及び使用人以外の者で当該個人から生計をみてもらっている者並びにそれらの親族で生計を一にしている者をいう(相令31)。
(注3)社団等が特別の利益を与えることは、社団等の機関の地位にある者、贈与をした者又はこれらの者と特別の関係がある者について、たとえば、次に掲げる事実がある場合又はその事実があると認められる場合がこれに該当するものとして取り扱われている(昭55直資2-182改正)。
- 当該社団等の施設その他の財産を居住、担保、生活資金その他私的の用に利用していること。
- 当該社団等の余裕金をこれらの者の行う事業に運用していること。
- 当該社団等が解散した場合に残余財産がこれらの者に帰属することになっていること。
- 当該社団等の他の従業員に比し有利な条件で、これらの者に金銭の貸付けをしていること。
- 当該社団等の所有する財産をこれらの者に無償又は著しく低い対価で譲渡していること。
- これらの者が過大な給与の支給を受け、又は当該社団等の機関の地位にあることのみに基づき報酬を受けていること。
- これらの者の債務が社団等によって保証、弁済、免除又は引受けされていること。
- 当該社団等の事業の廃止等により、不要に帰する財産がこれらの者に帰属することとなっていること。
- 当該社団等がこれらの者から金銭その他の財産を過大な利息又は賃貸料で借り受けていること。
- 当該社団等がこれらの者からその所有する財産を過大な対価で譲り受けていること、又はこれらの者から公益を目的とする事業の用に供するとは認められない財産を取得していること。
- 契約金額が少額なものを除き、入札等公正な法法によらないで、これらのものが行う物品の販売、工事請負、役務提供、物品の賃借その他事業に係る契約の相手方となっていること。
- 事業の遂行により供与する公益を主として、又は不公正な方法で、これらの者に与えていること。