法人に対する負担付贈与
POINT
- 個人が法人に対し負担付贈与をしたときは、負担額が贈与する財産の時価の2分の1未満であるときは、時価で譲渡したものとみなされる(所法59①2)。
- 法人に対しては、受贈資産の時価と負担額との差額を受贈益として法人税が課税される。
個人が法人に対し譲渡所得の基因となる資産の贈与を行った場合は、所得税法59条1項1号の規定により(対価が全く支払われないにもかかわらず)時価で譲渡されたものとみなされる。これに対し、個人が法人に負担付贈与を行い受贈者の負担が贈与者の利益となる場合には負担が対価性を帯びるので対価のない取引に対価を擬製する所得税法59条1項の規定の適用の余地はなく、(譲渡所得の課税要件を定める)所得税法33条の規定により負担部分を対価として譲渡所得の課税対象とされ、低廉譲渡に当たれば所得税法59条2項の規定が適用される。
すなわち、贈与する財産の時価に比べ負担額が著しく低いときは、時価で譲渡したものとみなされる(所法59①2)。著しく低い価額とは「時価の2分の1に満たない金額」とされている(所令169)。負担額が贈与財産の時価の2分の1以上ならば、負担額、すなわち当事者が取り決めた金額で譲渡所得の計算を行う。負担額が時価の2分の1未満であれば時価で譲渡したとして譲渡所得の計算を行わなければならない(所令169、所基通59-2)。いずれの場合も、受贈法人は、受贈資産の時価と負担額との差額を受贈益として益金に計上する。
同族会社に対し譲渡所得の基因となる資産を低廉譲渡したときにおいて、株主等特殊関係者の所得税の負担を不当に減少させる結果となる場合は、同族会社の行為又は計算の否認規定(所法157)の適用がある。その場合は低廉譲渡価額が時価の2分の1以上であっても時価で譲渡したとみなされる(所基通29-3)。
なお、公益法人等その他公益を目的とする事業を行う法人に対する譲渡所得の非課税規定(措法40)は、法人に対する贈与又は遺贈に関する所得税法59条1項1号の特別規定であり、所得税法59条1項2号に規定する低額譲渡に係るみなし譲渡所得に関しては適用がないことに注意が必要である。負担付贈与は所得税法59条1項2号に該当するから、公益法人等に対する譲渡所得の非課税規定(措法40)の適用の余地はなくなる。公益法人等に負担を求める場合は、譲渡所得は非課税にならないということである。