法人から個人に対する贈与(相法21の3①一)
贈与者
POINT
法人が個人に財産を贈与したときは、法人は当該財産を時価で譲渡したものとみなされ、含み益があれば、法人税法上、その含み益を益金の額に算入する(法法22②)。含み損があれば損金の額に算入する(法法22③)。
受贈者
POINT
個人が法人から贈与により取得した財産は一時所得として所得税が課税され、贈与税は非課税とされている(相法21の3一、所基通34-1)
贈与税は相続税の補完税であるから、納税義務者である受贈者は原則として個人に限るとともに、贈与者も個人に限る。相続が開始することのない法人については、相続税の課税原因が生ずることもないので、相続税の補完税としての贈与税の課税も行われない。
個人が法人(注)から贈与により取得した財産は一時所得とされ、贈与税は非課税とされている(相法21の3一、所基通34-1)。法人格を有さない代表者又は管理者の定めのある人格のない社団又は財団から贈与により取得した財産についても法人からの贈与に準じ、一時所得とされ、贈与税は課税されない(相基通21の3-2、所法34、所基通34-1)。
(注)法人には、株式会社などの他に、国、地方公共団体、外国法人を含む(相基通21の3-1)。
個人に対する贈与と法人の経理
法人が個人に財産を贈与する場合、企業会計上、全額が費用とされる場合であっても、法人税法上は特定の寄付金を除き一定の限度を超える金額は損金の額に算入されないこととされている(法法37)。また、法人の役員等が個人として負担すべき性格を持つ支出は、その者に対する賞与や退職金(継続して行われる場合は給与)であり、交際費や福利厚生費等に該当する支出は寄付金から除かれる(法法37⑦、法基通9-4-1~9-4-2の2)。
寄付金の損金算入限度額は、①一般の寄付金、②完全支配関係のある他の法人に対する寄付金、③国又は地方公共団体に対する寄付金、財務大臣が指定した寄付金、④特定公益増進法人などに対する寄付金の別により図表Ⅰ-33のとおり異なる(法法37、措法66の11の2②)。
寄付金の区分 | 取扱い | |
イ | 一般の寄付金 | 資本金等の額と所得の金額に基づいて計算した金額まで損金算入できる |
ロ | 完全支配関係がある他の法人に対する寄付金 | 全額損金算入できない |
ハ | 国又は地方公共団体に対する寄付金 | 全額損金算入できる |
ニ | 財務大臣が指定した寄付金(指定寄付金) | |
ホ | 特定公益増進法人に対する寄付金 | イとは別枠の限度額の範囲内の金額まで損金算入できる |
ヘ | 特定公益信託財産とするために支出する金銭等(公益増進信託に限る) | |
ト | 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に対する寄付金 |
(出典:税大校本『法人税』p.92)