国庫への帰属

被相続人(死亡した人)に相続人となる配偶者、子(孫等を含む)、親(祖父母等を含む)、兄弟姉妹(甥・姪を含む)が誰もいないと、「相続人がいない相続」となります。

相続人になるべき人が先に死亡してしまっている場合だけでなく、相続人全員が相続放棄をしてしまい、結果的に相続人がいなくなる場合などが考えられます。

相続人が不存在の場合、被相続人が遺言書を遺していれば遺言書に書いているように財産を処分します。
相続人が不存在で遺言書もない場合、または遺言書があっても一部の遺産についてしか書いておらず遺産が残る場合、遺産は最終的に国庫に帰属します。(国のものになります)

国庫に帰属されるとしても放っておけばよいのではなく、「被相続人に相続人がいない」ということを法的に成立させ、被相続人の財産と借金を精算して、最終的に残った遺産が国庫に帰属されます。

ただし、相続人以外の人で被相続人の療養看護をした者等がいる場合、国庫に帰属させる前の段階で「相続財産分与の申立て」の手続きを行い、家庭裁判所が分与を認めてくれれば遺産を譲り受けることができます。

特別縁故者

被相続人の内縁の妻や義理の子、事実上の親子関係にある子(養子縁組をしていない子)などは、相続権がないので遺産を相続することができませんが、被相続人に相続人がおらず遺言書もない場合、以下の条件に該当する人に限って特別に財産を分け与える特別縁故という制度があります。
これにより財産を相続する人を特別縁故者といいます。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
    内縁の妻、長年一緒に生活していた同居人、養子縁組はしてないが実の子のようにされていた者など
  • 被相続人の療養看護に努めた者
    通常の業務以外に日常の介護や入退院の手続き、葬儀の世話などをした民生委員や看護師、介護士など(ただし、看護師や介護士が仕事として看護した場合については、原則として特別縁故者には当たりません。)
  • その他被相続人と特別の縁故があった者
    友人や知人の介護をした者、配偶者の親族(義理の親や兄弟等)の世話をした者など

特別縁故者として認められるには、家庭裁判者へ「相続人不存在による相続財産清算人の選任」と「特別縁故者の申し立て」を行い、裁判所から特別縁故者だと認められる必要があります。
特別縁故者として認められると、特別縁故者の財産分与の申立てが認められ、特別縁故者が被相続人の財産を相続する権利が生じることとなります。
特別縁故者として認められなければ、相続人不在となり被相続人の遺産は国庫へと移ることになります。

特別縁故者は法定相続人ではありませんが、遺贈により遺産を取得したものとみなされ相続税が課されます。しかし、法定相続人とは異なるため、相続税法上適用される控除のうち適用されないものがあります。

  1. 基礎控除のうち、3000万円の控除は適用されますが、法定相続人一人当たりの控除額600万円は適用されません。
  2. 配偶者の税額軽減の適用はありません。
  3. 相次相続控除の適用はありません。
  4. 障害者控除の適用はありません。
  5. 相続税額の2割加算が適用されます。
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