贈与税の納税義務者は贈与により財産を取得した個人に限られる(相法1の4)。営利法人は贈与等の納税義務者とはならない。営利法人は、贈与により取得した資産の時価を受贈益として計上し、法人税が課税される(法法22②)。
ただし、営利法人に対する贈与があった場合に、間接的に営利法人の株主に対する利益供与となる場合がある(相法9)。営利法人に対する利益の供与により、その法人の株価が上昇するときには、贈与者から営利法人の株主に対し株価上昇分の経済的利益の贈与があったと認定され贈与税が課される(3)(相基通9-2)。
(3)会社が資力を喪失した場合における私財提供行為により受ける経済的利益については、債務超過額に相当する部分の金額については、一時的に債務超過となっている場合を除き、経済的利益の贈与としては取り扱わないこととされている(相基通9-3)。
個人が営利法人に資産を贈与したときだけでなく、低廉譲渡、現物出資、債務免除などを行ったときも、同様にその法人の株主に対する経済的利益の供与となり、法人に対する贈与者から株主が経済的利益の贈与を受けたものとして贈与税が課税される。
受贈者となる法人は営利法人ばかりではない。人格なき社団・財団、持分の定めのない法人も受贈者として登場する。受贈者が代表者又は管理者の定めのある人格なく社団・財団であるときは、相続税法は無条件に個人とみなして贈与税の納税義務者としている(相法66①④)。
持分の定めのない法人(持分の定めのある法人で持分を有するものがないものを含む。)は、特定の場合に個人とみなされ贈与税の納税義務者となる(相法66④⑥)。特定の場合とは、贈与者等の親族その他これらの者と特別の関係があるものの贈与税、相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときをいう(相法66④⑥、相令33③)。相続税等の負担が不当に減少する結果となると認められる場合とは、次の適正要件から外れた運営組織や事業運用がなされた場合をいう(相令33③)。