都市伝説:毎年同じ額の贈与をすると危ないってホント?
嘘です。税務署の相続税の調査をしている調査官はみんな、この話を聞くたびに苦笑いをしています。
たとえば、毎年111万円を5年間続けて贈与すると、税務署から5年間分の贈与金額555万円を贈与したとして申告をし直せ、555万円に対する贈与税を払えといわれるリスクがあるというのです。
まとめて課税されると、税額は、前年に20歳になっていた孫や子どもが祖父母や両親から贈与を受けた場合は59万円、それ以外の人は68万5千円にもなるのです。
111万円の贈与でしたら、贈与税は1千円なので5年分5千円でよいと思っていたら59万円や68万5千円を支払えといわれるというおそろしい話です。
でも、そのような課税がなされることは実務ではありません。
では、どうしてこのような都市伝説が巷に流布されているのでしょうか。過去には日経新聞にも書かれたことがある「権威ある都市伝説」です(典型的なfake newsですけれど)。
その理由は、自称「相続税の専門家」という人達にあります。
自称「専門家」という人達は、相続税法をきちんと勉強していないで見よう見まねで依頼された申告書を作ったりするばかりか市販の節税本を読みあさって、よく考えもしないで、本に書いてあることをそのまま、セミナーで話したりするのです。
それがいつの間にか新聞記事になったりしているのです(新聞記者もよく理解しないまま書いているのです。なんとも、無責任なことですが。)。
理論的になぜ大丈夫なのか?
相続税法は、贈与税の課税時期を
「書面による贈与は、原則として贈与契約書を作った時」
「口頭による贈与(口約束)は、贈与を履行した時」
としているのです。
ですから、あなたが、たくさん税金を払いたければ、意図的に、まとめて課税されるようにすることもできないわけではありません。
あなたが孫との間で「555万円を贈与します。ただし、5年に分けて毎年111万円あげるね」という贈与契約書をつくれば、理論的には555万円をもらう権利(定期金)を贈与したことになります。
ただ、現実には親子や祖父母と孫との間で、わざわざ、そのような契約書を作ることはありません。
そうすると、毎年111万円あげても、5年間にまとめて贈与税を支払えと税務署に言われることはあり得ないのです。
「税務署、そんなに暇じゃないすよ」と税務署員がつぶやいているのが聞こえそうです。