不動産の特性と不動産市場に対する基本的理解

不動産の特性と不動産市場に対する基本的理解
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不動産を経済価値の観点から見るということはどういうこと?

土地等の相続税評価には、不動産の特性と不動産市場に対する基本的理解が必要で、「利用区分(効用・用途)」、「不動産の態様(構成)」という二面的アプローチが評価手法を考えるうえで重要です。

不動産(土地)の特性

自然的特性(人間と関わりなく持っている特性)

  1. 土地の地理的位置は固定されていて、他の場所へ運ぶことは出来ません。従って、不動産取引では土地の権利が移動するだけで土地そのものは移動することはありません。
  2. 例えば、地震が起きて建物は壊れ瓦礫になっても、土地はその性質・面積を変えることはなく、半永久的に存続します。
  3. 土地の地理的位置、面積、形状、地盤等がまったく同じものはない(まったく同じ代用品はない)ので、状況類似の土地と比較考量することになります。

このような性質から、その自然的特性は固定的であって硬直的であると言われています。

人文的特性(人間との関わりの中で生じてくる特性)

  1. 土地を利用するにあたり、その用途は宅地、工業地、農地等があり、さらに宅地については、住宅地、商業地など多様です。さらに、土地を自分で利用することもでき、人に貸すことも出来ます。また、その土地のうえに平屋や高層ビルを建てることもでき、さらに地下の利用が競合する場合もあるなど利用形態も多様です。また、その用途も時代の変遷により変化します。
  2. 土地は使いやすいようにまたは収益が上がるように、その面積や権利関係を変えることができます。
  3. 土地のある場所は変わらなくても、外部の状況が変化することによって、農地から宅地になったり、住宅地から商業地になったりします。

このような社会的及び経済的位置の可変性等があるという性質から、その人文的特性は可変的であって伸縮的であると言われています。

不動産市場の特性

  1. 不動産市場は、不動産によっては元本(所有権)市場と賃貸市場が成立し、それらの間には(不動産の価格が2倍になれば、賃貸料も2倍になるというような)相関関係があります。
  2. 不動産は用途が多様であり、買手と売手同士及びその相互間に競争原理が働くため、最有効使用を前提とした価格がリード役となり、価格が形成されます。

土地等に対するアプローチの方法

不動産(土地)と不動産市場の特性を理解できたとしても、ただ漫然と不動産を眺めていただけでは不動産を経済価値として捉える方法は見つかりません。それには、不動産と人間の生活と活動がどのように関わり合っているか(不動産のあり方)という観点が重要になります。その関係は次のように言い換えることができます。

  1. 人間が、その不動産をどのように利用することによって効用(快適性と収益性)を得ているか
  2. 人間が、その不動産を利用するためにどのような形態(有形的利用及び権利の態様)に作り上げてきたか

という二面的な捉え方ということになります。

上記1を具体的に説明すると、自然環境と交通の便を兼ね備えた土地は住宅の用に供することによって快適さを、また、駅前の集客力のある土地は店舗の用に供することによって収益を得るように利用するというように、不動産ごとにその利用の仕方が違ってきます。

同様に上記2については、住宅地は自ら利用し地上建物は低層のものとする、また、商業地費用を掛けて高層建築として第三者に賃貸する等、不動産ごとに有形的利用及び権利の態様が異なります。

例えば、高度商業地には高層ビルが建ち、店舗等のテナントが入り、主として収益性が市場価格を左右しています。これに対し、高級住宅地では低層の住宅が建ち、主として快適性が市場価格を左右しています。そしてこの二つの市場には代替性がなく、別々の市場が形成されています。このように、その不動産に最もふさわしい利用の仕方(最有効使用)になるよう、用途と有形的利用及び権利の態様の二つの組み合わせを合理的に決定した結果が、具体的な不動産のあり方に現れているのです。この二面的に不動産を捉えるということ、つまり、その価値を効用(用途)と費用(有形的利用及び権利の態様)として捉えることにより、経済的価値の計算ができ、さらにそれが実際の不動産市場の需要に裏付けられれば、より客観性のある市場価値が求められるわけですから、この二面的な捉え方がいかに重要か分かると思います。

例えば、路線価地域における不動産のあり方については、横軸に用途、縦軸に物的及び権利の態様をとり、【表1】のようにしてみるとよく分かります。

具体的には横軸に、ここでは便宜上、宅地(商業地、住宅地、工業地)を取り上げることにします。この「利用区分」欄は宅地をどのような用途に利用するかを表しています。また、縦軸に自用地(更地)、貸付地(貸地)、借地権、貸家建付地、底地等の主な態様をとります。この「有形的利用及び権利の態様」欄は、宅地を利用するにあたり、不動産をどのように構成してきたかを具体的に示しています。なお、不動産をどのような用途に利用しているかという観点からの分類を「種別」、不動産をどのように構成してきたかという観点からの分類を「類型」ともいいます。

【表1】路線価地域(市街地的形態を形成する地域)における土地のあり方

路線価地域(市街地的形態を形成する地域)における土地のあり方
路線価地域(市街地的形態を形成する地域)における土地のあり方

Ⅰ~Ⅷは不動産の類型ごとにそれぞれの不動産市場が個別にあることを表しています。ただし、それらは密接な相互関係があり、貸付地~底地の市場とも関連して市場を形成しています。なお、この地域にある農地・山林等は、宅地として価格が形成されますので、宅地比準方式で評価することに留意します。

自用地は、土地のうえに存する権利が付着していない土地を自ら利用する場合その土地のことです。また、貸付地は、借地権の目的となっている土地のことです。借地権は、建物の所有を目的とした地上権または賃借権であり、底地は通常、借地権が設定されている土地をいいます。貸家建付地は、地主所有の建物を賃貸している場合の敷地をいいます。

ところで、相続税の土地等の評価計算では、「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(第1表)」で宅地の用途に応じた自用地(更地)の評価を行い、その第2表で土地の上に存する権利の態様に応じた評価をすることになっています。これも土地等に対する二面的アプローチに従ったものといえます。