特別縁故者が財産分与を受けた場合
被相続人と特別の縁故があった者で、相続人の不存在が確定した際、請求により家庭裁判所から相続財産の分与を受けることができる者を特別縁故者という(民法598の3①)。具体的には、内縁の妻、未認知の子、事実上の養子など被相続人と生計を一にし、あるいは被相続人の療養看護に努めた者などが特別縁故者に該当する。自然人に限らない。被相続人が世話になっていた老人ホームなどでもよい(内田貴『民法Ⅳ』p.458)。財産分与の請求は相続人捜索の公告期間(民法958)の満了後3ヶ月以内にしなければならず(民法958の3②)、家庭裁判所は相当と認めればこれらの者に清算後の相続財産の全部又は一部を分与する。
相続税法は、特別縁故者が財産の分与を受けた審判があったときの時価(相続税評価額)に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなしている(相法4、22)。特別縁故者が被相続人の葬儀費用や被相続人の入院費用等の未払費用を支払った場合、別途、相続財産から支払を受けていなければ分与を受けた財産からこれらの価額を控除した価額が取得した財産の価額として扱われる(相基通4-3)。
なお、所得税法には分与財産について遺贈を受けたものとみなす規定がないので、譲渡所得の計算上の取得費も当該価額となる(所法60①)。
基礎控除は法定相続人がいないので3,000万円となる(相基通15-1)。特別縁故者の相続税は、相続税の2割に相当する金額が加算され、被相続人の死亡前3年以内に被相続人から受けた贈与があれば、受贈時の価額で相続税の課税価格に加算される(相法18、相基通4-4)。
相続人の不存在が確定するのに数年を要し、家庭裁判所から財産の分与を受けるのが、相続開始後数年を経て、その間に相続税法が改正されていた場合でも、相続税を算出するにあたっては、被相続人が亡くなったときの相続税法の規定が適用される(相法27)。
特別縁故者は、遺産の分与を受けることができることを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告書を被相続人の死亡の時における住所地を管轄する税務署長に提出しなければならない(相法29、附則3)。