遺言による財産処分の三類型

遺言による財産処分の三類型

一口に遺言といっても、遺言により行う財産処分には次の三つの種類がある。

  1. 相続分の指定(民法902)
  2. 遺産分割方法の指定(民法908)
  3. 遺贈(民法904)

このうち、①相続分の指定と②遺産分割法方法の指定は、遺言者が相続人に対して遺産の分け方をどうすべきか意思を示す方法である。

遺言者は、遺言で共同相続人の各相続分を指定することができる。法定相続分と異なった割合を決めることができるのである。これを相続分の指定という(民法902)。

遺言者は、遺言で遺産の分割方法を指定することもできる(民法908)。特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続させる遺産分割方法の指定の遺言と解すべきであり、その場合には、特定の資産につき、相続による承継を特定の相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らかの行為を要せずして、特定の遺産は被相続人の死亡時に直ちに相続により承継される(最判平3.4.19民集45巻477頁)。遺言で分割方法の指定がなければ、共同相続人全員の協議で分割する(民法907①)。協議で分割できないときは、請求により家庭裁判所が審判で定める(民法907②)。

遺贈は、遺言によって自分の財産を無償で他人に与えることである。遺贈の相手方は相続人でなくてもかまわない。自然人だけでなく法人に対する遺贈ももちろん可能である。

相続分の指定と遺産分割方法の指定は、遺贈と非常によく似た機能を果たすため、遺贈との区別が問題となる。いずれも遺言でなされるため遺言の解釈という形で問題となる(1)

(1)内田貴『民法Ⅳ』p.483。

判例は、上記のように、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言についてであるが、「遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではない」としている。

図表Ⅱ-13 遺言の三類型と取得者区分

遺言による財産処分の三類型法定相続人法定相続人以外の者
相続分の指定×
遺産分割方法の指定×
遺贈
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