持分の定めのない法人に対し、贈与があり、かつ、葬よ斜塔の親族等の贈与税・相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、持分の定めない法人は個人とみなされ贈与税・相続税が課税される(相法66④)。受贈益に対し法人税等が課税されている場合は、贈与税等から当該法人税等を控除する(相法66④⑤)。持分の定めない法人を設立するために財産の提供があった場合も同様とする(相法66②)。
親Aが持分の定めない法人Xを設立し、収益マンションをXに寄贈した場合。Aの子BがXに寄贈された収益マンションを実質的に管理し、あたかもXが名義上の権利者にすぎないと認められる場合や、実質的にはBがXの支配を通じ寄贈された収益マンションを取得したと認められるような場合にXを個人とみなしてAから受贈された受贈益に対し贈与税が課税される。受贈益に対する法人税等は控除される。
相続税法施行令においては、「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果とならない」場合を次のとおり定めている(1)(相令33③)。
(1)昭和39年6月9日直審(資)24 直資77国税局長あて国税庁長官通達に定められていたものが平成20年の税制改正で法令化かつ明確化された。
1 その運営組織が適正であると共に、その寄附行為、定款又は規則において、その役員等のうち親族関係を有する者及びこれたと次に掲げる特殊の関係があるもの(次号において「親族等」という。)の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合は、いずれも3分の1以下とする旨の定めがあること。
イ 当該親族関係を有する役員等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるもの
ロ 当該親族関係を有する役員等の使用人及び使用人以外のもので当該役員等から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの
ハ イ又はロに掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの
ニ 当該親族関係を有する役員及びイからハまでに掲げる者の他、次に掲げる法人の法人税法2条15号《定義》に規定する役員((1)において「会社役員」という。)又は使用人である者
2 当該法人に財産の贈与若しくは遺贈をした者、当該法人の設立者、社員若しくは役員等又はこれらの者の親族等に対し、施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属、金銭の貸付、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任その他財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないこと。
3 その寄附行為、定款又は規則において、当該法人が解散した場合にその残余財産が国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人(持分の定めのないものに限る。)に帰属する旨の定めがあること。
4 当該法人につき法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記録又は記載をしている事実その他公益に反する事実がないこと。
贈与者等から持分の定めのない法人が贈与を受け、贈与者等の親族など特別関係者の贈与税・想像税の負担が不当に減少するときは、相続税法66条4項の規定により持分の定めない法人を個人とみなして相続税・贈与税が課税される。
しかし、贈与者の親族等の贈与税や相続税の負担の不当な減少にならない場合でも持分の定めない法人を利用して特別の利益を特定の者に与えることも不可能ではなく、贈与者の親族等以外の特定の者に贈与や遺贈を行う際に、持分の定めない法人が利用される可能性もある。知人が支配している持分の定めない法人に財産を贈与する代わりに贈与者の息子を評議員や理事に就任させ贈与に見合った多額の報酬を受けさせる場合は相続税法66条4項により受贈法人を個人とみなして贈与税が課税される。これに対し、公には贈与を受け取ることができない人を持分の定めない法人の評議員に就任させ、法人に対し贈与を行うと共に就任させた評議員に多額の報酬を支払う場合は、贈与者と受益者に親族関係等の特別の関係がないため相続税法66条4項の規定は働かず、同法65条により当該評議員が受ける特別の利益(多額の報酬)に対し贈与者からの贈与があったものとみなされることとなる。特定の者とは、持分の定めない法人の設立者、社員、理事、監事、評議員をいう。
この規定は、相続税法66条により持分の定めない法人が個人とみなされ贈与税・相続税を課税される場合を除いて適用される(相法65①)。