老人ホームで亡くなった場合の小規模宅地特例

老人ホームで亡くなった場合の小規模宅地等特例

被相続人が自宅を空き家にして、老人ホームで亡くなった場合、一定の要件を満たすと空き家である自宅敷地を小規模宅地等の特例の対象とすることができる。

老人ホームに入居している場合の取扱い

被相続人が老人ホームに入居(転居)している場合には、その老人ホームがその被相続人の相続開始の直前の居住場所と考えられることから、老人ホームへの入居前に被相続人の居住の用に供されていた宅地等は、この特例の適用対象外とするのが理論的である。

しかし、個々の事例の中には、そのものの身体上又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため自宅を離れているような場合もあり、諸事情を総合勘案すれば、一律に生活の拠点を移転したものとして特例を適用しないことは実情にそぐわない面がある。

平成26年1月1日以後に開始した相続税の申告においては、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合でも、居住の用に供されなくなる直前にその被相続人の居住の用に供されていた宅地等を、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等と同様にこの特例を適用することとされた(措令40の2②)。

相続開始時点で老人ホームへ入居していたこと

  1. 介護保険法に規定する要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人が次に掲げる住居又は施設に入居又は入所していたこと。
    1. 老人福祉法に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(認知症高齢者グループホーム)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム又は有料老人ホーム
    2. 介護保険法に規定する介護老人保健施設
    3. 高齢者の居住の安定確保に関する法律に規定するサービス付き高齢者向け住宅(1-1の有料老人ホームを除く。)
  2. 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害者区分の認定を受けていた被相続人が同法に規定する障害者支援施設(施設入所支援が行われるものに限る。)又は共同生活援助を行う住居に入所又は入居していたこと。

上記の要介護認定者若しくは要支援認定又は障害者支援区分の認定を受けていたかどうかは、相続開始時点で判定することとされているため、入居又は入所前にこれらの認定を受けている必要はない。

従前居住していた家屋の状況

入居後新たにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。具体的には、老人ホーム等へ入居後、被相続人の居住の用に供されなくなった後に、新たにその宅地等を次の用途に供した場合には、その宅地等はこの特例の適用を受けることはできないこととされている(措令40の2③)。

  1. 事業(貸付を含む。事業主体は問わない。)の用
  2. 被相続人又はその被相続人と生計を一にしていた親族以外の者の居住の用

添付書類

老人ホームに入居していた場合、この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に添付して提出することとされている書面に加え、次の書類を提出する必要がある(措規23の2⑦三)。

  1. その相続開始の日以後に作成された被相続人の戸籍の附表の写し
  2. 介護保険の被保険者証の写し又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害福祉サービス受給者証の写しその他の書類で、その被相続人がその相続開始の直前において介護保険法に規定する要介護認定者若しくは要支援認定又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害者支援区分の認定を受けていることを明らかにするもの
  3. その被相続人がその相続開始の直前において入居又は入所していた住居又は施設の名称及び所在地並びにこれらの住居又は施設が前述のいずれの住居又は施設に該当するかを明らかにする書類

(比較参考)【長期入院のケース】

被相続人が病院に入院したことにより、それまで被相続人が居住していた家屋が相続開始の直前には居住の用に供されていなかった場合であっても、入院により被相続人の生活の拠点は移転していないと考えられることから、従前からその建物の敷地のように供されている宅地等は被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとして、この特例の適用対象とされている。また、病院である介護療養型医療施設及び療養介護を受ける施設に入っていた場合にも、病院と同様、この特例の適用対象とされている。