平成2年9月27日の最高裁第一小法廷判例は、次のように共同相続人全員による合意解除による遺産分割協議のやり直しが法律上可能であることを認めているが、国税庁は、一貫して、無効原因の伴わない単純な遺産分割協議のやり直しを原因とする財産の移転については、相続による承継ではなく相続人が取得した遺産の贈与であるとしている(相基通19の2-8)。

「共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然に妨げられるべきものではなく、上告人が主張する遺産分割協議の修正も、右のような共同相続人全員による遺産分割協議の合意解除と再分割協議を指すものと解される」

平2.9..27最判一小

遺産分割の無効に関する判例としては次のものがある。

「共同相続人に一部を欠く遺産分割協議は、除外された相続人が追認しない限り無効だから、全ての当事者が改めて遺産分割を請求することができる。相続回復請求権(民法844)の消滅時効の援用はできない」

最判昭53.12.20、最判平7.12.5家月48巻7号52

税務署長は、一部の当事者が欠けた無効な遺産分割協議に基づいた申告があった場合、追認の有無を確認し、追認がなされない場合には、更正・決定ができる期間内であれば税額が減少する者については職権で減額更正を行い、税額が発生し、自己のために相続が開始していたことを知っていて法定申告期限を徒過してなお無申告の者に対しては法定申告分による期限後申告を慫慂し、提出がない場合には決定処分を行う。

無効な遺産分割に代わる有効な遺産分割が共同相続人・包括受遺者全員により行われた結果、取得財産が変動し納付すべき税額が過大となった相続人や包括受遺者は、有効な遺産分割が行われた日の翌日から2ヶ月以内に更正の請求をすることができる(通法23②)。

納付税額が減少するものがある一方で、新たに相続税を納付しなければならない者や追加で納付しなければならない者がでた場合、①自己のために相続が開始していたことを知っていた相続人や包括受遺者は、修正申告又は期限後申告を行わなければならない。この場合は、過少(無)申告加算税や延滞税が賦課される。②遺産分割に参加できなかった者が自己のために相続が開始したことを知らなかった場合には、知った日から10ヶ月以内に相続税の申告を行う必要がある。

共有