相次相続控除
遺贈を受けた財産について、相次相続控除を受けるためには、受遺者が相続人(法定相続人)でなければならない(1)。相続人とは民法に規定する相続権を有する者をいうから、相続を放棄した者や廃除等により相続権を失った者は相続人ではないので、これらの者が遺贈を受けた場合に相次相続控除は適用できない。相続人でない受遺者にも適用はない(相基通20-1)。
(1)民法や判決文で「相続人」といえば、法定相続人を指す。
相次相続控除の規定では、最初に相続税が課税された相続を第一次相続と呼ぶ。第一次相続により相続財産を取得した相続人が第一次相続開始後10年以内に亡くなった場合(2)の相続を第二次相続と呼ぶ。祖父Xが亡くなり、①Xの遺産を相続した息子Aが亡くなり、②Aの遺産を相続した孫Bが亡くなったときに、Bの相続税の申告において考慮する相次相続控除税額はAの死亡によりBが負担した相続税である。Aの相続が第一次相続、Bの相続が第二次相続である。Aの相続税の申告においてAが負担したXの相続税は相次相続控除の対象とはならない(相基通20-4)。
(2)正確には、第二次相続に係る被相続人がその相続の開始前10年以内に開始した相続(被相続人からの遺贈を含む。)を第一次相続と呼ぶ。
Bを被相続人とする相次相続控除は、第一次相続でBが負担した相続税が対象となる。
(注)AはXの相続人であり、BはAの相続人である場合に、相次相続控除の適用がある。A又はBが各被相続人の相続人ではなく、単なる受遺者である場合には、相次相続控除の適用はないのであるから注意する。
■未成年者控除・障害者控除は
未成年者や障害者は相続を放棄しても、遺贈や死亡保険金を受領したときには、未成年者控除、障害者控除の適用を受けることができる。未成年者控除や障害者控除は、放棄がなかったものとした場合の相続人に適用される(相法19の3①、19の4①)。これは、未成年者控除や障害者控除は、財産を取得する人に注目した規定だからである。これに対し、相次相続控除は、ほぼ同一の遺産が一族の間で相次いで相続され、10年という比較的短期間に二度課税されるという不合理な負担を軽減しようとする規定なので、適用対象者を民法上の相続人に限定している。たまたま、被相続人の行為により相続人ではないのに遺産を受けた受遺者には適用がない。
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