相続人は、被相続人と一定の血縁関係(法定血族を含む。)を有する血族相続人と被相続人の配偶者であることにより相続権が認められる配偶者相続人の二系統に分類される。血族相続人は被相続人の子(直系卑属を含む。)、直系尊属、兄弟姉妹(直系卑属を含む。)である。
第一位の血族相続人は子である(民法887①)。被相続人と法律上の親子関係があれば良い。嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とされていたが(旧民法900四ただし書き)、平成25年9月4日に出された大法廷決定は、当該規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきであると判示した。
これを受け、平成25年12月5日、民法の一部を改正する法律が成立し、嫡出でない子の相続分が嫡出子と同等になった(同月11日公布・施行)。
民法の改正のポイントは、①法定相続分を定めた民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の二分の一と定めた部分(900条4号ただし書き前半部分)を削除し、嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等にしたことと、②改正後の民法900条の規定は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用することとした点にある。
新法が適用されるのは、平成25年9月5日以後に開始した相続であるが、平成25年9月4日の最高裁判所の違憲決定があることから、平成13年7月1日以後に開始した相続についても、すでに遺産分割が終了しているなど確定的なものとなった法律関係を除いては、嫡出子と嫡出でない子の相続分が同等のものとして扱われる。
孫以下の直系卑属は全て自己固有の相続権がなく子を代襲して相続し得るにとどまる。
第二順位の血族相続人は、直系尊属である(民法889①一)。実父母、実祖父母共に固有の相続権を有するがより近い親等の直系尊属が一人でもいれば、それにより遠い親等の直系尊属は相続人になれない。
第三順位の血族相続人は、兄弟姉妹である(民法889①二)。父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とされている(民法900四ただし書き)。代襲相続は兄弟姉妹の子(甥姪)まですることが出来る(民法889②、901②)。
配偶者は、第一順位、第二順位、第三順位の血族相続人と並んで常に相続人となる(民法890)。血族相続人がいないときは単独で相続人となる。
項目 | 条文 | 相続又は遺贈により財産を取得した者(相続税の納税義務者) | ||||||||
配偶者 | 子 | 養子 | 代襲者 | 包括受遺者 | 欠格者 | 放棄された者 | 放棄した者 | |||
民法に規定する相続人 | 民法886~895 | ○ | ○ | ○ | ○ | 注1 | × | × | × | |
欠格者の子は代襲相続人となる | 被廃除者の子は代襲相続人となる | 放棄者の子は代襲相続人にならない | ||||||||
相続税法の規定 | 死亡保険金の非課税規定 | 相法12①五イ | ○ | ○ | ● 注2 | ○ | × | × | × | × |
死亡退職金の非課税規程 | 相法12①六イ | ○ | ○ | ● 注2 | ○ | × | × | × | × | |
相次相続控除 | 相法20、相基通20-1 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | |
基礎控除の計算 | 相法15 | ○ | ○ | ● 注2 | ○ | × | × | × | ○ | |
法定相続分による相続税の総額の計算 | 相法16 | ○ | ○ | ● 注2 | ○ | × | × | × | ○ | |
相続人の数に算入される養子の数の制限 | 相法63 | ○ | ○ | ● 注2 | ○ | × | × | × | ○ | |
相続税の2割加算対象 | 相法18、相基通18-1、18-3 | × | × | ○ 注3 | × | ○ | △ 注4 | △ 注4 | △ 注4 | |
配偶者の税額軽減特例 | 相法19の2① | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | ○ | |
未成年者控除 | 相法19の3①③ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | ○ | |
障害者控除 | 相法19の4①③ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | ||
相続時精算課税に係る相続税の納税義務の承継 | 相法21の17 | ○ | ○ | ○ | 注5 | ○ | × | × | × | |
申告期限前に相続人が死亡した場合の申告義務者 | 相法27② | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × |
(注1)包括受遺者:相続人ではないが、遺産の全部あるいは何分の一という割合で遺贈を受ける者をいう。包括受遺者は相続人と同一の法律的地位に立つことになり、相続の承認、遺産分割などの規定がそのまま適用される(民法990)。
(注2)養子の数の制限:基礎控除の計算(相法15②)において養子の数は制限され、この取扱いは、相続税法15条の規定する養子の数を基礎とする死亡保険金、退職金の非課税規定及び相続税の計算においても同様となる。
(注3)孫養子は2割加算の対象となる。民法上、法定血族とされる養子、養親は一親等の血族として、相続税の2割加算の対象とはならないのが原則であるが、被相続人の直系卑属で被相続人の養子となっている者、いわゆる孫養子や曾孫養子(代襲相続人である場合を除く)については相続税の加算の対象となる(相基通18-3)。
(注4)相続放棄をした者、欠格者若しくは廃除の事由により相続権を失った者が遺贈や死亡保険金を取得した場合、これらの者が配偶者や一親等の血族ならば、2割加算の対象とならない(ただし、代襲相続人が相続放棄をし遺贈等を受けた場合は、2割加算の対象となる。)。
(注5)相続税法21条の17(相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等)の適用においては相続税精算課税適用者が特定贈与者より先に死亡した場合の代襲を同人の相続人(承継相続人)の相続人(再承継相続人)までしか認めず、再承継相続人には認めない(相法21の17④、相基通21の17-1)。なお、民法上、相続時精算課税適用者を被相続人とする第二順位の相続人となる特例贈与者は、相続時精算課税適用者の権利義務を承継できないこととしている(相法21の17①)。