共同相続人や包括受遺者の間で、相続財産の一部が未分割となっている場合の相続税の課税価格の計算について、相続税法55条は、「相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。」と規定している。この「民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合」をどのように解するかによって二通りの考え方がある。
一つは、単純に「未分割財産の価額×法定相続分」で計算した額を分割済み財産の価額に加算する方法である。この方法で計算すると多くの財産を分割協議で取得している相続人は、分割協議済み財産に「未分割財産×(法定又は指定)相続分」を加算するので、より多くの遺産を取得した形で申告を行うこととなる。
これに対し、「遺産の総額×(法定又は指定)相続分-分割取得済財産」で各々の相続人・包括受遺者の未分割財産の割合を計算する方法が考えられる。
相続税法55条にいう相続分の割合とは、「共同相続人が他の相続人にその権利を主張できる持分的な権利の割合をいい、相続財産の一部の分割がされ、残余が未分割である場合には、各共同相続人は、他の相続人に対し、遺産全体に対する自己の相続分に応じた価額相当分から、既に分割を受けた遺産の価額を控除した価額相当分についてその権利を主張できるものと解される(昭62.10.26東京地裁)」から、後説による計算が合理的である。
なお、いずれの計算方法によっても相続税の総額が変わることはないので、前説により計算して相続税の申告書を提出しても課税庁から修正を求められることはない。