税理士田中耕司の愚痴と本音
最近の税務調査
我が事務所は、国税局や税務署で相続税の調査を行っていた国税OB税理士が多いのですが、その他、いろいろな経歴の税理士がいます。
今回は、外資系金融機関のプライベートバンキング部に勤務していた税理士からの相談です。
スレンダーな彼女、見るからに慶応OGという感じのとても上品な税理士です。
「ちょっとご相談が」と話しかけられたのは相続税の調査のことでした(我々税理士には守秘義務があるので、以下、大幅に書き換えていますことご承知置きください)。
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調査官から指摘された問題点は、①A証券会社の被相続人の口座(株式数銘柄、時価300万円程)が申告から漏れていので修正申告が必要だということ、②重加算税を課税するとのこと。
問題は追加で支払う相続税に35%増しで課税される重加算税です。
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税務署は、なぜ重加算税を課税すると意気込んでいるのか?
調査官の説明は次の通り。
①二女(相続人)は、相続税の申告期限前に300万円ほどの株式が被相続人の口座にあることをしっていたこと、②同じく相続税の申告期限前に被相続人の口座を解約し、二女の口座に株式を移したこと、③そのことを、税理士に、告げなかったこと
要は、わざと申告しなかったから重加算税だという理屈です。
でも、この場合、重加算税は課税できないのです。
重加算税が課税されない理由は、法律の規定にあります。
税務署長が重加算税を課税できるのは、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときなのです(国税通則法68条)。
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二女は、相続税の申告期限前に被相続人の口座から二女の口座に株式を移しているのですから、申告しなければならない株式があったことを知っていた(二女だけでこのことを行うことは、できないので、相続人全員が知っていたといえる)のですが
重加算税を課税できるのは、偽の領収書を作ったり(仮装)、株式を隠したり(いまは電子化されているので隠すのは難しい)、売った金を隠したり(隠蔽)しなければならないのです。
株式があることを知っていたのに、税理士に教えなかたことは、あまり誉められたことではありませんが、証券会社の手続きは全て本名で行っているので重加算税を賦課することはできないのです。
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問題は税務署の調査の仕方です。
ちょっとけしからんといって、それだけで、重加算税という言葉を持ち出して納税者を怯えさせるようなことは、謹んで欲しいものです。
憲法30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。 (Article 30: The people shall be liable to taxation as provided by law.)」
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